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月曜日のメンタル不調を科学的に考えてみる
「月曜日になると気分が重い」「日曜の夜から憂うつになる」――これは多くの方が経験することです。単なる気分の問題ではなく、世界の研究からも月曜日にメンタル不調が出やすい傾向が報告されています。以前投稿した「なぜ月曜日はメンタルの不調を感じやすいのか?」を見ていただいた方が多くおり、今回は海外ジャーナルを参考に精神科医が科学的に考える回としました。
なぜ月曜はつらいのか?
1. 週末の夜更かし・寝坊のツケ
土日は夜更かしをしたり、朝遅くまで寝たりしがちです。すると体内時計がズレて、月曜の朝は時差ボケのような状態になります。これを「ソーシャル・ジェットラグ」と呼び、憂うつ感やだるさにつながります。
2. 仕事や学校が始まるストレス
人間の体は「明日から仕事(学校)が始まる」と意識すると、自律神経やホルモンが緊張モードに入ります。特に起きた直後にストレスホルモン(コルチゾール)が多く分泌され、体や心に負担がかかります。
3. 「月曜=つらい」という思い込み
心理学の実験では、月曜は「気分が最もネガティブ」と感じやすく、金曜は「最もポジティブ」と答える人が多い結果でした。つまり、月曜はつらい日だと思い込みやすいのです。
4. 行動の影響が週明けに現れる
週末にお酒を飲みすぎたり夜更かししたりすると、その影響が週明けに持ち越されます。そのため、自己傷害や救急受診が日曜・月曜に多いというデータもあります。
研究からわかったこと
- ・国際的な大規模調査で月曜の自殺リスクが少し高い(BMJ, 2024)。
- ・アイルランドのデータでは日曜・月曜の救急受診が多い(J Affect Disord, 2017)。
- ・日本や韓国の研究で週末の睡眠のズレが大きい人ほど抑うつ傾向が強い(Sleep, 2019 他)。
- ・平日はストレスホルモンの朝の分泌が強い(Psychoneuroendocrinology, 2016)。
- ・心理学研究で月曜は最もネガティブに感じられる曜日(PLOS ONE, 2015)。
月曜をラクにする工夫
- 週末も平日と近い時間に寝起きする(±1時間以内)。
- 日曜の午後に散歩や日光浴をして体内時計をリセット。
- 月曜は軽めの予定からスタート。重い仕事は火曜以降に。
- 日曜のうちに翌日の準備を済ませて安心感を得る。
- 小さな楽しみを月曜に用意(お気に入りの朝食や休憩の予定)。
受診を考えるサイン
- ・憂うつや不安が2週間以上続く。
- ・日曜夜になると強い不安や動悸が毎週出る。
- ・お酒に頼る日が増えている。
- ・会社・学校に行けない
参考文献(一部)
- Lee W, et al. BMJ. 2024.
- Griffin E, et al. J Affect Disord. 2017.
- Islam Z, et al. Sleep. 2019.
- Min J, et al. J Affect Disord. 2023.
- Skoluda N, et al. Psychoneuroendocrinology. 2016.
- Ellis DA, et al. PLOS ONE. 2015.
まとめ
月曜日の不調は、誰にでも起こりうる「人間らしい現象」です。科学的にも一定の根拠があり、決して甘えや気のせいではありません。しかし、その影響は小〜中程度であり、生活習慣の工夫や環境調整で和らげられることが多いです。
もし憂うつや不安が長引いて日常生活に支障が出ているなら、ひとりで抱え込まずに医療機関にご相談ください。早めに相談することが、回復への近道になります。
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