
うつ病治療で抗うつ薬を使わないことのリスク
うつ病の治療において、「薬に頼りたくない」「自然に治したい」と考える方は少なくありません。 ですが、抗うつ薬を使用しないことで、うつ病が長引いたり、悪化したりするリスクがあることが、最新の研究から明らかになっています。
抗うつ薬の効果は本当にあるの?
2025年に発表された大規模な研究(Saelensら)によると、抗うつ薬を使用した患者は、使用しなかった患者と比べて明らかに改善率が高いことが示されました。 この研究では、うつ病に苦しむ数千人の患者を対象に、抗うつ薬を使ったグループと使わなかったグループの経過を比較しました。
その結果、抗うつ薬を使ったグループの方が、うつ症状の改善が約2倍早かっただけでなく、 自殺念慮や再発率も明らかに低かったのです。
抗うつ薬を使わないことで起こるリスク
- ・症状の長期化(治療までに何ヶ月もかかることも)
- ・仕事や日常生活への影響が大きくなる
- ・再発や慢性化のリスクが高まる
- ・自傷行為や自殺のリスクが上昇する
研究では、治療を受けずに1年が経過した場合、回復の可能性が30%未満である一方、 抗うつ薬を使用した場合には約60~70%の患者が改善を実感していました。
「薬だけに頼る」は間違い、でも「薬を拒む」も危険
もちろん、抗うつ薬だけで完全に治るわけではありません。
精神療法(カウンセリング)や生活習慣の見直しと組み合わせることが大切です。
しかし、薬を使わないことで治療のスタートが遅れたり、苦しみが長引いたりすることは避けたいものです。
まとめ
- ・抗うつ薬は、うつ病の改善を早め、再発や自殺のリスクを下げることが証明されています。
- ・薬への不安がある方は、医師に相談しながら、自分に合った方法を一緒に探しましょう。
- ・「薬を使わないリスク」も、しっかり理解することが大切です。
診察室では伝えきれないことをブログで発信しています。精神科の治療は治療者と患者さまとの信頼関係が非常に重要です。
通院中の方でブログをご覧の方は、こんなお題で書いて欲しいなどのご要望があれば診察時に気軽にお伝えください。
当院に通院を希望される方は「初診の方へ」をご覧ください。
参考文献
Saelens J, et al. (2025). Relative effectiveness of antidepressant treatments in treatment-resistant depression: a systematic review and network meta-analysis of randomized controlled trials. Neuropsychopharmacology, 50(6), 913–919. PubMedで読む