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寝る前のごちゃごちゃとした思考を和らげるには
こんにちは。院長の青木です。
「布団に入ったのに、今日あったことや明日の予定が頭の中でぐるぐるして眠れない」という声をよく聞きます。仕事や家庭のこと、人間関係、スマホのニュースやSNSの刺激など、私たちの頭は常に情報でいっぱいです。
今日はそんな“寝る前のごちゃごちゃ”をやさしく和らげるためのヒントをお伝えします。
なぜ寝る前に頭が活発になるのか
昼間は仕事や家事などで頭も体も忙しく動いています。
ようやく静かになった夜、脳は「いまのうちに整理しよう」と動き始めることがあります。
これが「考えが止まらない」「眠れない」と感じる原因のひとつです。
また、ストレスや不安が強いと、反すう(同じことを何度も考えてしまう状態)が起こりやすくなります。これは自然な反応であり、「自分が弱いから」ではありません。
眠りに向かう“準備の時間”を作る
眠る直前までスマホを見たり、メールを返信したりしていませんか?
脳は光や情報の刺激を受けると、「まだ活動時間だ」と判断してしまいます。
寝る30〜60分前を「準備の時間」として、少しずつ心と体をオフモードに切り替えましょう。
- ・照明を少し落とす:明るすぎると脳が昼間だと錯覚します。温かい色の明かりに。
- ・スマホを遠ざける:ブルーライトは眠気を抑えることが分かっています。
- ・温かい飲み物をゆっくり飲む:カフェインのないハーブティーや白湯など。
- ・心地よい音や香りを取り入れる:静かな音楽やアロマも良いリセットになります。
“頭のなかの考え”を外に出す
頭の中で考えていることを、紙に書き出してみましょう。
「今日あったこと」「明日やること」「気になっていること」など、順番もきれいさも気にせず書いてOKです。
脳の中にある“タスク”や“感情”を外に出すだけで、頭の容量が空きます。
こうした「頭のなかの考えの書き出し」は、ストレス軽減にも効果があることが報告されています。
呼吸と体をゆるめる習慣
頭の中が動きすぎているとき、無理に「考えるのをやめよう」としてもうまくいきません。
そんなときは「体から落ち着ける」のが近道です。
- ・ゆっくりと深呼吸する:4秒で吸って、6秒で吐く。吐く時間を長めに。
- ・軽いストレッチ:肩をまわしたり、首を伸ばしたり。血流が良くなりリラックスできます。
- ・ボディスキャン:足先から順に「力を抜く」イメージで体を感じていく方法です。
研究でも、深呼吸や漸進的筋弛緩法が自律神経を整え、入眠を助けることが報告されています。
“眠れない夜”の考え方
それでも眠れない夜はあります。
そんなときは、「眠れない」と焦るよりも、「体を休ませる時間」と割り切るのが大切です。
目を閉じて、深呼吸をしながら横になるだけでも、体は回復しています。
「眠らなきゃ」と思うほど眠りは遠ざかります。
“眠れなくても大丈夫”という余裕を持つことで、自然と眠りやすくなることも多いのです。
日中の過ごし方もポイント
実は、夜の眠りは「昼の過ごし方」にも左右されます。
朝、太陽の光を浴びること、昼間に少し体を動かすことが、夜のメラトニン分泌を整えます。
また、昼寝は短め(20分以内)にすることで夜の眠りを邪魔しません。
それでも眠れないときは
2週間以上、眠れない日が続く場合や、日中の集中力・気分に支障が出ているときは、我慢せずご相談ください。
不眠の背景には、ストレスやホルモンバランス、うつ病・不安障害などが隠れていることもあります。
睡眠薬を使わずに改善できる方法もたくさんあります。一人で抱え込まず、医療機関で話してみることが第一歩です。
おわりに
眠る前の“頭のごちゃごちゃ”は、多くの方が経験する自然な反応です。
大切なのは、「どうすれば自分の心が落ち着くか」を少しずつ見つけていくこと。
今夜は、スマホを置いて、照明を落として、深呼吸をひとつ。
「今日もよく頑張ったな」と自分を労って、ゆっくり休んでくださいね。
当院に通院を希望される方は「初診の方へ」をご覧ください。
参考文献
- Harvey AG, et al. “Cognitive processes in sleep disturbance: A review of the theoretical and empirical literature.” *Behaviour Research and Therapy.* 2002.
- Morin CM, et al. “Cognitive behavioral therapy, singly and combined with medication, for persistent insomnia.” *JAMA.* 2009.
- Perlis ML, et al. “Behavioral treatment of insomnia: A clinical case series study.” *Journal of Behavioral Medicine.* 1999.
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」.
- 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター「睡眠とメンタルヘルスの関係について」.
- Okajima I, et al. “Meta-analysis of behavioral treatments for insomnia in adults.” *Sleep Medicine Reviews.* 2021.



