
目次
漢方のメンタル疾患への効果は?
漢方薬は抑うつや不安、ストレスなどの“こころの不調”に対して、どのように作用するのでしょうか?また、メンタル疾患に効くという根拠を何なのでしょうか?この記事では効果や仕組み、代表的な処方を分かりやすく紹介します。
漢方の基本的な作用メカニズム
漢方は≪体のバランス(ホメオスタシス)を整える≫ことを重視します。特に柴胡系(さいこけい)の処方は、炎症を抑えることで、ストレスや不安・抑うつに働きかけると考えられています。
代表的な漢方
抑肝散(よくかんさん)
ストレスや精神の興奮、不眠、認知症関連の症状に効果があります。ラット実験ではストレスによる排便増加やコルチゾール(ストレスホルモン)の上昇を抑制し、オキシトシン分泌と関連した鎮静作用が示されました。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
不安神経症や緊張型のストレス反応に用いられます。マウスの社会的ストレスモデルで、不安・睡眠障害・攻撃性などを改善し、脳のセロトニン系にも良い影響が確認されています。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
神経質でストレスを溜めやすい体質に用いられ、1ヶ月の服用で特性不安・状態不安の低下、生活の質(QOL)の改善が臨床的に確認されています。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
不安、不眠、動悸、怒りっぽさ、焦燥感などを訴える人に用いられる処方です。小柴胡湯に鎮静作用のある竜骨・牡蛎を加えた構成で、自律神経の調整や中枢神経の過敏を緩和する作用があるとされています。PTSDや不眠症などに対しても臨床使用の報告があります。
漢方は西洋薬とどう違う?
- ゆるやかに体全体を整える:ホメオスタシスを促すため、副作用が比較的少ない傾向があります。
- 個別に処方調整:患者さんの体質や症状に応じて処方を選ぶ “随証治療” が特徴です。
- 併用の可能性:精神科医のアンケートでは、「向精神薬と漢方の併用」を行う医師が約84%と報告されています。
こんな場合に漢方が向いている?
– 緊張しやすく日常生活での不安が続く
– よく眠れない、夜中によく目が覚める
– 抗不安薬・抗うつ薬が合わない・控えたい
– 西洋薬の副作用が気になる
注意すべきこと
- ・服用開始1~2週間で体調の変化は感じられることもありますが、効果は数週間~1ヶ月ほど続けた上で評価します。
- ・妊娠中の方も比較的安全にしようできると言われていますが、必ず医師と相談しましょう。
- ・西洋薬との併用時は、薬効や副作用に注意しながら医師の指導のもとで使用してください。
- ・急性期の精神症状がある場合は、漢方のみの治療では、症状増悪や治療期間が長くなる可能性がありますのでご注意ください。
まとめ
漢方薬は、ストレス・不安・抑うつなどに対して、「心と体のバランスを整える」という特徴を持つサポート的治療法です。抑肝散・半夏厚朴湯・加味逍遙散・柴胡加竜骨牡蛎湯などが研究や臨床で効果が示されています。
もしご自身の症状に合いそうであれば、診察時にご相談ください。
当院に通院を希望される方は「初診の方へ」をご覧ください。