
精神疾患は合併する?疾患どうしのつながりと遺伝の影響
今回は私の専門分野の遺伝子の話を絡めてお話しさせていただきます。少し、難しい内容ですが、頑張ってわかりやすく書いてみましたので、よろしければ最後までお付き合いください。
うつ病や双極症(双極性障害)、統合失調症、ADHDなどの精神疾患。こうした病気は、1つだけでなく複数が重なってあらわれることがあります。今回は、「精神疾患はなぜ合併しやすいのか?」や「それらの病気はつながっているのか?」「遺伝の影響はどれくらいあるのか?」を、わかりやすく解説します。
精神疾患はなぜ合併するの?
実際の診療の中でも、「うつ病と不安障害を同時に抱えている」や「ADHDと依存症が重なっている」など、複数の診断名がつくことは珍しくありません。
その理由には以下のようなことが考えられます。
- 症状が似ている:例えば「不安」「イライラ」「眠れない」といった症状は、複数の精神疾患に共通しています。
- ひとつの病気が、別の病気を引き起こす:たとえば、ADHDが原因でうまくいかないことが多くなると、自己肯定感が下がり、うつ症状が出てくることも。
- もともとの体質(遺伝的な傾向)が似ている:それぞれの病気の背景にある「なりやすさ」が重なっているため、複数の病気を併せ持ちやすいのです。
病気同士には「共通点」がある?
最近の研究では、「精神疾患どうしは遺伝的な背景が重なっていることが多い」ということがわかってきました。これはつまり、「ある精神疾患になりやすい体質の人は、他の精神疾患にもなりやすい体質を持っていることがある」ということです。
たとえば、統合失調症と双極性障害は、似た傾向の脳の働きや遺伝的な要素が関わっていることがあります。また、ADHDとうつ病も、重なる体質があるため、両方を持つ人が多いと報告されています。
これは「どちらか1つの病気の人は、もう1つの病気にも注意した方がよい」という意味でもあります。
精神疾患と「遺伝」の関係
精神疾患は、「遺伝だけで決まる」わけではありません。ただし、ある程度の「かかりやすさ」が体質として受け継がれることもあります。
これは糖尿病や高血圧と似ています。家族にそうした病気があると自分もなりやすいですが、生活習慣やストレス管理によって、発症を防ぐことが可能です。
家族に精神疾患があると、自分もかかりやすい?
「親や兄弟に同じような病気があるけど、自分もなるの?」という疑問を持つ方は多いです。
実際、家族に精神疾患がある場合は、自分も似たような傾向を持つことがあります。でも、それは「必ず発症する」ことを意味するわけではありません。
大切なのは、気づくのが早いほど、予防や対処がしやすいということです。自分の傾向を知り、必要に応じて早めに専門家に相談することで、症状の悪化を防ぐことができます。
まとめ
- ・精神疾患は、複数が同時にあらわれることがあります。
- ・その背景には、症状の重なりや、病気どうしの共通する体質(遺伝的な傾向)があります。
- ・最近の研究では、さまざまな精神疾患のあいだに「なりやすさの共通点」があることがわかってきています。
- ・家族に精神疾患がある場合でも、早めの対策で予防や軽症化が可能です。
「もしかして自分も?」と不安になった時点で、一度話をしてみることはとても大切です。自分の心の傾向を知ることは、不安を減らし、安心して生活するための第一歩です。
人間の脳と行動には解明されていない分野が多く、常に最新の情報を得て患者さまの治療に還元したいと思っています。
当院では、丁寧な診察とカウンセリングやご相談も受け付けています。どんな小さなことでも、気軽にお話しください。
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